オーストラリア中央銀行声明全文(2023年5月2日)

2023年5月2日

本日5/2(火)に行われたオーストラリア政策金利発表後のオーストラリア中央銀行声明全文です。(ロイターより転載)

 本日開催された理事会では、キャッシュレートの目標を25ベーシスポイント(bp)引き上げ、3.85%とすることを決定した。また為替決済残高の金利を25bp引き上げ3.75%とした。

 オーストラリアのインフレ率はピークを過ぎたが7%とまだ高すぎ、目標範囲に戻るにはまだ時間がかかるだろう。妥当な期間内にインフレ率を目標に戻すことが重要なことから、一段の利上げが正当化されると判断した。

 理事会は経済の状態と見通しを評価するための追加的な時間を確保するため、先月金利を据え置いた。最近のデータでインフレ率が低下したことは喜ばしいことだが、目標範囲の上限に戻るまでに2年程度(couple of years)かかるという中心的な予測は変わっていない。インフレ率は2023年には4.5%、25年半ばには3%になると予想されている。新型コロナウイルスの大流行に起因する混乱が解消され、需給バランスが改善したため、製品価格の上昇は明らかに鈍化している。しかしサービス価格の上昇率は依然として非常に高く広範囲に及んでおり、海外の経験からも上昇リスクが指摘されている。生産性の伸びは依然として緩やかで、単位労働コストも力強く上昇している。

 失業率がほぼ50年ぶりの低水準となるなど、最近の国内指標でも労働市場の逼迫が確認されている。労働力不足は多少緩和され、欠員はやや減少しているものの、多くの企業がなお人材の確保に苦慮している。

 インフレ率を目標値に戻すことが引き続き理事会の優先事項だ。高インフレは人々の生活を困難にし、経済の機能を損なう。また高インフレが人々の期待に定着すれば、金利をさらに引き上げ失業率が一段と上昇することになるため、後でインフレ率を下げるには非常にコストがかかる。中期的なインフレ期待は依然としてしっかりと固定されており、この状態を維持することが重要だ。本日の追加的な金利の調整はこの点で役立つだろう。

 労働市場の逼迫とインフレ率の上昇を受けて賃金は上昇し続けている。全体としては、生産性の伸びが回復すれば、賃金の伸びはなおインフレ目標に合致している。経済の余剰能力が限られ失業率が歴史的低水準にあることを踏まえ、高インフレが続くという予想が物価と賃金の上昇につながるリスクを引き続き警戒している。従って労働コストの推移と企業の価格設定行動に今後も細心の注意を払っていく。

 経済を安定させながらインフレ率を2─3%の目標範囲に戻すことを目指しているが、軟着陸を達成するための道筋は依然として狭い。トレンド以下のペースではあるものの、経済は成長を続けるというのが中心的な予想だ。国内総生産(GDP)は今年1.25%、25年半ばまでの1年間では2%程度増加すると予想される。トレンド以下の経済成長が見込まれることから、失業率は徐々に上昇し25年半ばには約4.5%になると予想される。

 不確実性の大きな要因は依然として個人消費の見通しだ。金利の上昇、生活費の圧迫、住宅価格の下落が重なり、個人消費は大幅に鈍化している。貯蓄に余裕のある世帯もあれば、家計が圧迫され困難に直面している世帯もある。また、今後2年程度(couple of years)は平均以下の成長率になると予想される世界経済についても不透明感がある。

 インフレ率が合理的な期間内に確実に目標値に戻るようにするためには、金融政策のさらなる引き締めが必要になる可能性があるが、それは経済とインフレがどのように推移するかによる。世界経済の動向、家計消費の傾向、物価と労働市場の見通しにこれからも細心の注意を払っていく。インフレ率を目標に戻すという決意に変わりはなく、そのために必要なことを行う。

 

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