オーストラリア中央銀行声明全文(2022年5月3日)

2022年5月3日

本日5/3(火)に行われたオーストラリア政策金利発表後のオーストラリア中央銀行声明全文です。(ロイターより転載)

 本日の会合で、キャッシュレートの目標値を25ベーシスポイント(bp)引き上げ、35bpとすることを決定した。為替決済残高の金利もゼロ%から25bpに引き上げた。
 理事会は、パンデミック時にオーストラリア経済を支援するために実施された特別な金融支援の一部を撤回し始めるのにふさわしい時期だと判断した。経済は回復力を示し、インフレ率は予想よりも急速に上昇した。賃金の伸びも回復しつつあることが確認されている。これらと超低金利を考慮すると、金融環境の正常化プロセスを開始することが適切である。
 オーストラリア経済の回復力は、特に労働市場で顕著で、失業率はここ数カ月で4%に低下し、労働力人口は過去最高水準に増加している。求人と求人広告も高水準で推移している。中銀の中心的な予測では、失業率は2023年初頭までに3.5%まで低下し、その後その水準近辺で推移する見込みだ。これは過去約50年間で最も低い水準となる。
 オーストラリア経済の成長見通しも引き続き明るい。ただ新型コロナウイルス流行による世界経済、特に中国経済の混乱、ウクライナ戦争、インフレ率の上昇による消費者の購買力低下などから、世界経済には不確実性が存在する。オーストラリアの国内総生産(GDP)伸び率の中心的な予測は、2022年が4.4%、23年は2%だ。家計と企業のバランスシートは概して良好で、企業投資は回復基調にあり、完成予定の建設案件は多い。マクロ経済政策が引き続き成長を支え、国民所得は一次産品価格の上昇によって押し上げられている。
 インフレ率は予想以上に大幅に上昇したものの、他の大半の先進国を依然下回る。1─3月の総合インフレ率は前年比で5.1%、基調的なインフレ率は3.7%だった。このようなインフレ率の上昇は、主に世界的な界的な要因を反映している。しかし、国内の生産能力制約がますます大きな役割を果たすようになっており、企業がコスト上昇分を消費者価格に転嫁する姿勢を強めていることから、インフレ圧力はより広範囲に波及している。短期的にはインフレ率のさらなる上昇が予想されるが、供給側の混乱が解消されるに伴い、インフレ率は目標範囲の2─3%に向かって低下すると予想する。中心的な予測で、22年は総合インフレ率が約6%、基調インフレ率は約4.75%、24年半ばまでには総合インフレ率と基調インフレ率は3%程度まで低下する見込みだ。これらの予測は、さらなる金利の上昇を前提としている。
 企業への聞き取りでは、賃金の伸びが回復しているもようだ。労働市場が逼迫し、特に生活費が上昇する状況下で、従業員を引きつけ維持するため、高い賃金を支払う企業が増えている。21年の賃金上昇は控えめで、パンデミック前を上回ることはなかったが、企業調査などから、多くの民間企業で賃金上昇加速が起こっていることが示されている。
 完全雇用に向けたへの進展と物価・賃金に関する証拠の両方を考慮すると、パンデミックを通じて提供された特別な金融支援をある程度解除することが適切だ。これと整合的に、理事会は、満期を迎える国債の償還金を再投資することを計画していない。また、ターム物資金調達ファシリティーの終了に伴い、中銀のバランスシートが今後数年で大幅に縮小すると予想する。理事会は、パンデミック時に購入した国債の売却は今のところ予定していない。
 理事会は、オーストラリアのインフレ率が時間とともに目標値に回帰するために必要な措置を講じる所存である。そのためには、今後一定期間、金利のさらなる引き上げが必要になる見込みだ。理事会は、今後の金利引き上げのタイミングと程度を決定するうえで、今後入手する情報と変化するリスク・バランスを注意深く監視し続ける。

 

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