オーストラリア中央銀行声明全文(2021年6月1日)

2021年6月1日

本日6/1(火)に行われたオーストラリア政策金利発表後のオーストラリア中央銀行声明全文です。(ロイターより転載)

 本日開催された理事会で、10ベーシスポイント(bp)のキャッシュレートと3年物国債利回りの目標、国債購入プログラム、ゼロ%の為替決済残高に対する金利など現行の政策設定を維持することを決定した。
 世界経済は新型コロナウイルスのパンデミック(大流行)からの回復を続けており、今年と来年は力強い成長が見込まれている。しかし、回復にはまだばらつきがあり、ウイルスを封じ込められていない国もある。世界のモノの貿易は力強く回復しており、一次産品価格はほとんどが年初に比べて高くなっている。しかしインフレ率は依然として低く、中銀の目標値を下回っている。
 国債利回りは年初にワクチンに関する明るいニュースや米国の追加財政刺激策を受けて上昇した後、最近は安定している。中期的なインフレ期待は過去最低水準から上昇し、中銀の目標値に近づいている。オーストラリアの3年物国債利回りは理事会の目標値と一致しており、ほとんどの借り手の貸出金利は過去最低水準となっている。豪ドルは近年のレンジの上限に位置している。
 オーストラリアの景気回復は以前の予想よりも強く、今後も続くと予想されている。中銀の中心シナリオでは、今年の国内総生産(GDP)成長率は4.75%、2022年には3.5%となっている。この見通しは、財政措置と非常に緩和的な金融環境に支えられている。現在の重要な不確実要因は新型コロナの大規模な流行の可能性だが、これは国民の多くがワクチンを接種することで減少すると思われる。
 失業率の低下は予想以上にペースが速く、4月の失業率は5.5%に改善した。求人数は高水準にあり、今年末までには失業率が5%前後までさらに低下すると予想される。経済の一部では労働力不足が報告されている。
 景気と雇用の力強い回復にもかかわらず、インフレと賃金の圧力は抑えられている。物価と賃金の上昇が期待されるが、緩やかで小幅なものになる公算が大きい。中心シナリオでは、インフレ率は2021年に1.5%、23年半ばには2%になると予想している。短期的には、新型コロナに関連した一部の値下げが撤回されたため、消費者物価(CPI)の伸び率は一時的に拡大し、6月期には3%を超えると予想される。
 住宅市場は騰勢を強め、全ての主要市場で価格が上昇した。初めて住宅を購入する顧客を中心とした持ち家に対する強い需要を受けて、住宅融資の伸びが回復した。また投資家による借り入れも増加している。住宅価格の上昇と低金利の環境下で、中銀は住宅ローンの動向を注意深く監視する。貸出基準を維持することが重要だ。
 先月予告したとおり、2024年4月償還債を引き続き3年債利回り目標の対象とするか、次の2024年11月償還債に移行するかを7月の会合で検討する。なお10bpの目標値の変更は検討していない。7月の会合では、2回目の1000億ドル規模の国債購入プログラムが9月に終了した後の将来の国債購入についても検討する。理事会は完全雇用の回復を引き続き重視している。
 ターム資金調達ファシリティー(TFF)の最終借入日は2021年6月30日となっている。これまでに公認預金受入金融機関(ADI)向けに1340億ドルが提供され、さらに750億ドルが利用可能だ。TFFは3年間にわたり固定金利で低コストの資金を供給するもので、2024年半ばまで低い借入コストを支え続ける。
 理事会は、完全雇用の回復とインフレ目標の達成に向けて非常に支援的な金融条件を維持することを約束する。実際のインフレ率が2─3%の目標範囲内に持続的に収まるまで、キャッシュレートの引き上げは行わない。これが実現するには、労働市場が十分に引き締まり、賃金の伸びが現在の水準から大幅に拡大する必要がある。2024年までにこうした状況になる可能性は低い。

 

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