オーストラリア中央銀行声明全文(2021年3月2日)

2021年3月2日

本日3/2(火)に行われたオーストラリア政策金利発表後のオーストラリア中央銀行声明全文です。(ロイターより転載)

 本日開催された理事会では、10ベーシスポイント(bp)のキャッシュレートと3年物国債利回りの目標、ターム資金調達ファシリティー(TFF)、国債購入プログラムを含め、現行の政策設定を維持することを決定した。

 新型コロナウイルスワクチンの普及が進み、世界経済の見通しは、ここ数カ月で改善している。この先の道のりは引き続き険しく不均一と思われるが、持続的な回復の見通しは数カ月前よりも良くなっている。世界貿易は上向き、商品価格はここ数カ月で上昇している。とはいえ回復は依然として公衆衛生の状況と大規模な財政・金融支援次第だ。インフレ率は依然として低く、中銀の目標を下回っている。

 ワクチンに関するポジティブなニュースに加えて、米国ではさらなる大規模な財政刺激策が見込まれていることから、長期債利回りは過去1カ月で大幅に上昇している。これは中期的に予想されるインフレ率が各中銀の目標に近い水準まで上昇したことを一部反映している。こうした世界的な動きを受けて、豪債券市場でも同様の動きが見られた。世界的な債券利回りの変動は、為替レートを含む他の資産価格のボラティリティーと関連している。豪ドルはここ数年のレンジの上限で推移している。

 オーストラリアでは、景気回復は順調に進んでおり、当初の予想よりも堅調に推移している。雇用は力強い伸びを示し、失業率は6.4%まで低下した。個人消費は好調で、ローン返済を延期していた家計や企業のほとんどが返済を再開している。回復は続くと予想され、中心シナリオでは2021年と22年に国内総生産(GDP)が3.5%成長する見込みだ。GDPは今年半ばには19年末の水準に戻ると予想されている。

 賃金と物価の圧力は抑えられており、数年間はこの状態が続くと予想されている。経済は依然としてかなりの余剰生産能力が存在し、失業率は数年前よりも高い状態が続いている。余剰生産能力の削減は一段の進展が見込まれる。だが、労働市場が逼迫し賃金上昇によりインフレ目標が達成されるまでには、しばらく時間がかかる。

 中心シナリオでは、失業率は今年末には6%前後、2022年末には5.5%前後と予想される。基調インフレ率は21年には1.25%、22年には1.5%になると予想されている。CPI上昇率は新型コロナ関連の一部価格引き下げの反動で一時的に上昇するとみられる。

 金融政策は現在、借り入れコストを非常に低く抑え、為替レートの低下を促し、信用供給と家計・企業のバランスシートを支えることで、経済を引き続き支援している。金融政策と財政政策が一体となって、総需要の回復と雇用の持ち直しを支えている。

 ほとんどの借り手に対する貸出金利は過去最低水準にあり、住宅価格は最近全国で上昇している。住宅ローンの伸びは回復しているが、投資家や企業向け融資は伸びが弱いままだ。融資基準は引き続き健全で、住宅価格の上昇と低金利の環境下では、これを維持することが重要だ。

 豪中銀は、3年物国債利回り目標を維持しており、これを支えるために債券を購入した。今後も必要に応じて買い入れを継続していく。また、市場の円滑な機能を支援するため、債券購入を今週前倒しで実施した。今後も市場の状況に応じて買い入れを調整していく。

 当初の1000億ドルの債券購入プログラムの下で、これまでに、豪連邦政府及び州・準州が発行する国債を累計で740億ドル買い入れた。同プログラム終了後には新たに1000億ドルの購入が予定されており、必要に応じてさらに追加する用意がある。

 TFFの下で公認預金受入金融機関(ADI)向けに910億ドルが提供され、さらに940億ドルが利用可能だ。豪中銀のバランスシートは2020年初めから約1750億ドル増加した。

 理事会は目標が達成されるまで、非常に支援的な金融条件を維持することに引き続きコミットしている。実際のインフレ率が目標の2─3%の範囲内に持続的に収まるまでは、キャッシュレートを引き上げない。

 これを実現するためには、賃金の伸びが現在よりも大幅に加速しなければならない。そのためには雇用が大幅に増加し、労働市場が引き締まった状態に戻ることが必要となる。早くても2024年までにこれらの条件が満たされるとは予想していない。

 

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