オーストラリア中央銀行声明全文(2020年8月4日)

2020年8月4日

本日8/4(火)に行われたオーストラリア政策金利発表後のオーストラリア中央銀行声明全文です。(ロイターより転載)

 本日開催された理事会において、キャッシュレートの目標値や豪3年物国債利回り25ベーシスポイント(bp)など現行の政策を維持することを決定した。

 世界経済は新型コロナウイルスを封じ込めようとする各国の動きを受けて、深刻な収縮状態にある。収縮の最悪期は過ぎたとはいえ、先行きの不透明感は非常に高いままだ。回復は緩やかなものにとどまると予想され、回復の形は新型コロナの封じ込めにかかっている。一部の国では陽性率が低下しているがなお非常に高く、上昇している国もある。中国の産業活動はここ数カ月で力強い回復を見せているが、国際貿易は依然として弱い状況が続いている。

 世界的に見ても、金融市場の状況は緩和的な状態が続いている。ボラティリティは低下しており、債券と株式の両方が大きく上昇している。経済見通しの不確実性が高いにもかかわらず、多くの資産の価格は大幅に上昇している。債券利回りは歴史的な低水準を維持している。

 豪中銀による3月中旬の経済支援策は予想通りに機能している。国内金融システムの流動性は非常に高く、借入金利は歴史的な低水準にある。預金受入れ機関は引き続きターム物資金調達ファシリティーを利用しており、現在までの借入総額は約290億ドルに達している。今後数カ月の間に、このファシリティーのさらなる利用が予想されている。

 国債市場は発行量が大幅に増加したが正常に機能している。3年債利回りは目標とする約25bpとほぼ一致している。しかし、ここ数週間、利回りは25bpをやや上回っている。このような状況を踏まえ、3年債利回りが目標値と確実に一致しているよう明日、発行市場において国債を買い入れる予定だ。今後も必要に応じて買い入れを行う。利回り目標は完全雇用とインフレ率の目標達成に向けて進展が見られるまで据え置かれる。

 豪経済は非常に困難な時期を迎えており、1930年代以来最大の縮小を経験している。景気の落ち込みは予想されていたほど深刻ではなく、国内の大部分の地域では現在回復が進んでいる。しかし、この回復は不均一で不安定なものとなる可能性が高く、ビクトリア州での新型コロナ感染拡大は同州経済に大きな影響を与えている。全体的な見通しが不透明であることを踏まえ、理事会はさまざまなシナリオを検討した。基本シナリオでは、2020年に生産が6%減少し、翌年には5%増加 する。このシナリオでは、ビクトリア州でのさらなる失業者数の減少と、他の地域での求職者の増加により、2020年後半に失業率が約10%に上昇する。その後数年間は、失業率は徐々に低下して7%程度になると予想されている。

 理事会は他のシナリオも検討した。近い将来、ウイルスの封じ込めに進展があれば、より強い回復が可能だ。このような進展は家計や企業が信頼感を高め、支出に対する慎重な姿勢を弱めることにつながると考えられる。一方で、オーストラリアをはじめとする各国がさらに広範なロックダウン(都市封鎖)に見舞われた場合には、生産と労働市場の回復が遅れることになる。これらのシナリオの詳細については8月7日の金融政策に関する声明で説明する。

 理事会が検討したシナリオのいずれにおいても、インフレ率は今後数年間にわたって2%を下回る水準にとどまっている。直近の四半期において、消費者物価指数(CPI)伸び率は前年同期比でマイナス0.3%に低下した。これには原油価格の下落や、育児や一部の就学前教育の一定期間無料化を含むさまざまな政策措置の効果が反映されている。インフレ率は今四半期にはプラスに戻ると予想されている。それ以降も、経済の余剰生産能力が継続していることを考えると、インフレ率は今後数年間、平均で1─1.5%になると予想される。

 国民が新型コロナに対処している間、財政・金融政策の協調的で前例のないかなりの緩和が経済を支えている。豪政府がさまざまな所得支援策が延長されると最近発表したことは歓迎すべきことであり、総需要を支えることになる。経済と労働市場の見通しを考えると、しばらくの間は財政・金融刺激策が必要になる公算が大きい。

 理事会はオーストラリアの雇用、所得、事業を支援するためにできることを行うと約束している。中銀の措置は資金調達コストを低く抑え、家計や企業への信用供給を支援している。この緩和的なアプローチは必要とされる限り維持する。完全雇用に向けて進展があり、インフレ率が2─3%の目標値の範囲内で持続的に推移すると確信するまでは、キャッシュ・レートの目標値を引き上げない。

 

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