2024年11月5日
本日11/5(火)に行われたオーストラリア政策金利発表後のオーストラリア中央銀行声明全文です。(ロイターより転載)
本日の理事会で、キャッシュレートの目標を4.35%に据え置くことを決定した。為替決済残高に支払われる金利も4.25%で据え置く。
<基調的なインフレ率は依然高すぎ>
金利上昇により総需要と総供給が均衡に近づいたため、インフレ率は2022年のピークから大幅に低下した。第3・四半期の消費者物価指数(CPI)は前年比2.8%上昇し、第2・四半期の3.8%上昇から鈍化した。燃料価格と電力価格の下落によるもので、予想通りだった。しかし、この下落の一部は一時的な生活費軽減策によるものだ。これらの影響を除いた基調的なCPI(トリム平均値)は前年比3.5%上昇した。予想通りだが、インフレ目標の中間値である2.5%にはまだ程遠い。本日の金融政策報告(SMP)で示された予測では、インフレ率が目標の中間値まで持続的に戻るのは26年以降の見通しだ。
<先行きは依然として極めて不透明>
本日発表された予測は8月に発表されたものと類似している。基調的なインフレ率の予想経路は、基調的インフレの根強さ、景況感調査、労働市場の継続的な力強さによって証明されるように、総需要が依然として経済の供給能力を上回っているという判断を反映している。
生産の伸びは弱い。これまでの実質可処分所得の減少と現在も続く制限的な金融情勢の影響が、引き続き消費、特に裁量的消費の重荷となっている。しかし、学生や観光客など一時的な滞在者による支出を含む総消費者需要の伸びは、より底堅く推移している。
労働市場の状況は緩やかに緩和しているものの、依然として引き締まっていることをさまざまな指標が示している。いくつかの指標は最近安定化した。7─9月の3カ月間に雇用は平均0.4%の高い伸びを示した。9月の失業率は4.1%で、22年後半の3.5%から上昇した。しかし労働参加率は過去最高水準にとどまり、求人数は高止まりし、平均労働時間は安定している。同時に、若年失業率や不完全雇用など、労働市場の循環的な指標は最近低下している。
賃金圧力は幾分和らいだが、労働生産性は、過去1年間の上昇にもかかわらず、まだ16年の水準にとどまっている。
最近のデータと最新の予測を踏まえ、理事会は、政策が現在制約的であり、ほぼ予想通りに機能していると評価する。しかし不確実性もある。所得の伸びが回復するにつれて家計消費の伸びが今年後半に回復するというのが中心的な予測であり、第3・四半期には支出増加の暫定的な証拠が示された。しかし、回復が予想より鈍く、生産の伸びは低迷が続き、労働市場の悪化がより鮮明になるというリスクがある。より広範には、金融政策の効果の遅れや、需要過剰で労働市場の逼迫が続くという状況で企業の価格決定や賃金が経済の成長鈍化や生産性の低迷にどのように反応するかについて不確実性がある。
海外の見通しついても引き続き不透明感が強い。ほとんどの中央銀行は、インフレ率がそれぞれの目標に向かって持続的に戻りつつあるとの確信を強めたため、金融政策を緩和した。しかし、引き締め度合いを緩和しているに過ぎず、労働市場の軟化とインフレの高まりという両方のリスクをなお警戒している。中国当局は、経済活動の弱い見通しに対応して、より景気拡張的な政策を実施したが、これらの措置の影響(場合によっては具体的な内容)については、まだ見極める必要がある。地政学的な不確実性は依然として高い。
<インフレ率を目標に戻すことが優先課題>
理事会の優先事項はインフレ率を合理的な時間枠内で目標に戻すことだ。これは物価の安定と完全雇用という中銀の責務に合致する。これまでのところ、より長期的なインフレ期待はインフレ目標と整合的であり、この状態を維持することが重要だ。
総合インフレ率は大幅に低下し、しばらくは低水準が続くだろうが、基調的なインフレ率は物価上昇の勢いを示すものであり、依然として高すぎる。11月SMPで示した予測では、インフレ率が持続的に目標範囲に入り、中間値に近づくまでにはまだ時間がかかることが示されている。このことは、インフレの上振れリスクに引き続き警戒する必要性を裏付けるものであり、理事会は何も排除していない。インフレ率が目標範囲に向かって持続的に推移していると確信するまで、政策は十分に制限的である必要がある。
理事会は引き続き、データおよびリスク評価の進展を判断の指針としていく。その際、世界経済と金融市場の動向、内需の動向、インフレと労働市場の見通しに細心の注意を払う。理事会は、インフレ率を目標に戻すという断固とした決意に変わりはなく、その結果を達成するために必要なことを行う。